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初めて天皇と名乗った

天武天皇（てんむてんのう）　の はなし

天武（てんむ）２年（673）２月２７日、　大海人皇子（おおあまのみこ）　が即位し　天武天皇（てんむてんのう）　になったとき、はじめて　「天皇」　と称した。 　それまでは　「大王（おおきみ）」　と称していたのであるが、 　天武天皇は　神話の時代からの　「大王」　という呼称を　すべて　「天皇」　という言い方に統一しました。 したがって、　このページでは　天武天皇より前の時代でも　すべて　「天皇」　という言い方に統一しています。 また、　皇子　は、　このページでは　「みこ」　と呼びますが、　「おうじ」　とも読みます。

大化（たいか）の改新

大化元年（645）６月１２日、　朝廷内で絶大な権力をもっていた　蘇我入鹿（そがのいるか）　が　暗殺されました。　大化（たいか）の改新　です。 首謀者の一人は　天皇（大王（おおきみ））の息子　中大兄皇子（なかのおうえのみこ）　（天智天皇（てんじてんのう））　であった。 　　　　「大化」　は日本最初の元号である 　　当時の税の徴集（ちょうしゅう）方法は 　　地方の豪族がそれぞれの土地から税（米）を徴集し、　その一部を朝廷に納めていた。 　　しかし、　一豪族である蘇我入鹿は朝廷をもしのぐ勢力であったため、　天皇（大王（おおきみ））は危機感をつのらせていた。 　　このような背景から　入鹿暗殺事件が起こったのである。 皇太子として実権をにぎった中大兄皇子は大化の改新を推し進めるのであった。 　　　　（この大化の改新については異説もありますので、　それは別のページで紹介します） 飛鳥の都から北西３０Ｋｍに、　難波宮（なにわのみや）　を建設するのである。 この遺跡から出土した木簡（もっかん）の一つに　「秦人凡国評（はたひとおおくにのこおり）」　というのがある。 秦 ハタ　　渡来人の名前 人 ヒト　　 凡 オオ　　地名（国名） 国 クニ　 評 コオリ　（朝廷の役所） 評（こおり）　は全国各地に置いた税の役所である。 　地方の税（米）は全て朝廷に納められ、　朝廷が地方の豪族へ分配するという方法を取った。 これにより、　朝廷の支配力を確固たるものにしようとした。 さらに、　天皇（大王（おおきみ））の権威を見せ付ける次の手を打つのである。 ６６０年、　唐・新羅（しらぎ）　連合軍が１３万人もの大軍で　百済（くだら）　に侵攻。 ６６３年、　百済（くだら）　を支援するために　２万人もの大軍を朝鮮半島へ派遣した。 　しかし、　白村江（はくそんこう）の戦いで唐に大敗。　百済滅亡。　（白村江 は 「はくすきのえ」 とも読む） 中大兄皇子の政策は始めて挫折するのであった。 このとき、　中大兄皇子　を支えたのは　弟 大海人皇子（おおあまのみこ）　であった。 白村江の戦いに敗れ、　豪族たちが朝廷から離反しそうなとき、　大海人皇子　は奔走し　豪族たちの心をつなぎとめた。 これにより、　大化の改新は挫折することなく　中大兄皇子　は政策を進めることができた。 そして、 天智７年（668）５月、　中大兄皇子は即位し、　天智天皇（てんじてんのう）（大王（おおきみ））　となる。 天智天皇は即位してから、　（難波宮完成１５年後）　またも都を移すのである。　琵琶湖のほとり　近江（おうみ）の大津（おおつ） に。 この遷都には皆驚きました。　日本書紀には　「百姓（ひゃくせい）（＝皆）は遷都を願わず」　と記されている。 なぜ、　遷都にこだわったのか？ 大津宮の跡地に建てられた　近江神宮（おうみじんぐう）　に複製された水時計に　その理由が隠されている。 当時、中国唐から導入した 水時計 を大津宮に設置したのである。 これにより朝廷が日本国中の時間を管理するようになったのである。 天皇（大王（おおきみ））の権力を確固たるものにするために、　唐からいろいろな制度を導入したのである。 天智９年（670）２月、　日本で初めて　戸籍（こせき）　を導入し、 盗賊と浮浪を取り締まり、　労役を課そうとしました。 大津からは、琵琶湖を渡り日本海へ抜け、 中国唐へ行くことができます。 唐へ行くには、地理的に有利でありました。 こうして、　唐の制度を導入しようとしました。 大津一帯は、渡来人・大友氏の地盤でもあった。 このページの地図は フリー地図素材集 のデータを加工しました 天智天皇は自分の長男を大友氏に預け、その庇護（ひご）を受けさせました。 長男の名は　大友皇子（おおとものみこ）　といい、　大友氏の名から付けたとされる。 大友皇子が成長するにつれ、　次期天皇を息子に継がせようと思うようになり、 父子直系の皇位継承法である　「不改常典（ふかいのじょうてん）」　を定めました。 ６７１年１月、　大規模な組織変更を行ないました。 長男　大友皇子　を優遇するために　太政大臣（だじょうだいじん）　の職を作り、　皇位継承への準備を始めました。 それまでは、　一族の皇子のなかから　経験や実績を考慮して次期天皇（大王（おおきみ））が決められていました。 それを、　天智天皇は皇位継承の条件を従来の実績ではなく、　血統を優先しようとしました。 さらに、　左大臣に蘇我赤兄（そがのあかえ）、　右大臣に中臣 金（なかとみのかね）、　御史大夫（ぎょしたいふ）に蘇我果安（はたやす） ・ 巨勢人（きょせのひと） ・ 紀大人（きのうし）らを命じて、　 大友皇子のサポート体制を作り上げた。 天智天皇の　弟・大海人皇子（おおあまのみこ）　はこの人事に賛成しなかったのである。 側近として、兄・天智天皇を助け辣腕（らつわん）を振るってきた自分こそが次期天皇（大王（おおきみ））であると自負していたからである。

天智天皇 と 大海人皇子 との確執（かくしつ）は別の理由も？

額田女王（ぬかたのおおきみ）との三角関係？ 中大兄皇子が即位して天皇となったとき、 天皇は　大海人皇子（おおあまのみこ）、　中臣鎌足（なかとみのかまたり）らの豪族をともなって近江の蒲生野（がもうの）に狩に行った。 ここでの　額田女王（ぬかたのおおきみ）　と　大海人皇子（おおあまのみこ）　との歌のやりとりである。　（万葉集より） 額田女王　「あかねさす紫野行（むらさきのゆ）き標野（しめの）行き　野守（のもり）は見ずや君が袖振る」 　　　　　　　　　（野守が見はしないでしょうか、そんなに袖などお振りになって） 大海人皇子　「紫草のにほへる妹（いも）を憎くあらば　人妻ゆゑにわれ恋（こ）ひめやも」 　　　　　　　　　（紫草のように美しいあなたが憎いのなら、人妻であるあなたに何で恋などできましょうか） 天智天皇の妻となっていた額田女王（ぬかたのおおきみ）は、 これより先に弟である大海人皇子（おおあまのみこ）とのあいだに十市皇女（とおちのひめみこ）を生んでいたのである。　二十歳ころのことであろう。 額田女王は６３０年ころの生誕と推測されているので、　このころは４０歳前後と思われる。 であるから、　この歌自体は、　恋とか愛とかではなく昔のことを懐かしんでのことであろう。 当初、　大海人皇子（おおあまのみこ）の妻であり、　子供まで生んでいた仲でありながら、 兄、天智天皇がそれを横取りしたのは問題であろう。 このことから、　兄弟の関係は微妙なものであったと推測される。 このような関係を表現した歌とおもわれるのが、　天智天皇の詠んだ 　　「香具山（かぐやま）は　畝火（うねび）雄々（おお）しと　耳梨（みみなし）と　相（あひ）あらそひき 　　　神代（かみよ）より　斯（か）くにあるらし　古昔（いにしえ）も　然（しか）にあれこそ　うつせみも　嬬（つま）を　あらそふらしき」 　　　　　　（香具山が畝火山の愛を得ようと耳梨山と争ったように、　今も一人の女性を二人で争うことがあるようだ）

壬申（じんしん）の乱

天智天皇の死期が近づくと、　皇位継承の争いが表面化してきた。 ６７１年１０月１７日、　天智天皇は大海人皇子を枕元に呼び、 息子・大友皇子を次期天皇（大王（おおきみ））にすることに協力を求めた。 このとき、　大海人皇子は次のように答え、　協力をやわらかく拒否しました。 　　「私は病気で体が弱くなり、政務を勤められません。大友 王（おおとものみこ）に政務の万端を執り行わせなさいませ。 　　　私は出家して仏道の修行に励みたいと存じます。」 ６７１年１０月１９日、　大海人皇子（おおあまのみこ）　は大津宮（おおつのみや）を脱出し、 出家して奈良の吉野へ隠遁（いんとん）してしまいました。 ６７１年１２月、　天智天皇ご崩御（ほうぎょ） （死亡） 一方、　大津宮で実権を握った　大友皇子（おおとものみこ）　は大海人皇子に危険を感じ、　武力で滅ぼそうとして、 畿内各地から兵を集め始めました。 それに対し、　大海人皇子　は　いかにして　大友皇子の軍勢より多くの兵を集めることができるのか、 と　思案していました。 このころから、　大海人皇子　は不思議な力を見せ始めたと伝えられています。 浄見原（きよみはら）神社に伝わるところによると、 大友皇子の追手（おって）が近づいたとき、　村の人々はここに大海人皇子を隠れさせ、　舞を見せたり、食事をもてなしたりしました。 　　大海人皇子に川魚をだしたところ、　魚の半身だけを食べ、 　　　「自分がもし天下を取るならば、生き返るだろう」　と言って、　その魚を水に返しました。 　　すると、　魚はそのまま泳いでいった。　と、言われています。 このように、　大海人皇子　は　占いとか　天文学に長（た）けていて、　神秘的な人物であると日本書紀には書かれています。 ６７２年６月２４日、　大海人皇子　は吉野を出発し、　所領地美濃（みの）へ向かいました。 乗る馬もなく、　共の者も少なかったと伝えられています。 昼夜を継いで歩き、　馬を手に入れ伊賀（いが）（三重県）の名張（なばり）へ着きました。 名張に着いて、　人夫（にんぷ）を集めようとしたが、　ダメであった。 空には不気味な黒雲が漂い、　雷が鳴り響いていました。 ここで、　大海人皇子は占いをしました。 　「これは天下が二つに分かれようという徴（しるし）だ。 　　　しかし、自分が最後には天下を得るだろう」 この直後、　伊賀の長（おさ）が数百の兵を引き連れて大海人皇子の下に 馳せ参じました。 一方、　大友皇子（おおとものみこ）　は　大海人皇子が吉野を脱したことをつかんでいました。 ここで、　大友皇子は家臣にどのように対処すべきを問いただしました。 　「ただちに騎馬兵を差し向け、　大海人皇子を殺しなさい」　と、答えました。 しかし、　大友皇子は　これを聞き入れませんでした。 　　”大海人皇子一人を殺すより、　これを機に　大海人皇子に味方する勢力を一掃すべき”　と考えました。 大海人皇子（おおあまのみこ） は思案をめぐらしていました。 課題は、伊勢・尾張・美濃など東国の豪族をいかに味方に付けるか、　である。 さらに、　各地の評（こおり）にも、　自分が正当な継承者であることを いかにして認めさせるか、　である。 大海人皇子　は　この地で　「天照大神（あまてらすおおみかみ）を御遥拝（ごようはい）になった」　といわれています。 この地域最大の　伊勢神宮（いせじんぐう）　の御神体が　天照大神　である。 伊勢神宮は大和朝廷とはつながりが深く、　この伊勢湾を望む地域の豪族が崇拝していました。 大海人皇子はここに目をつけたのである。 大海人皇子はこの地域を重要視しているとのデモンストレーションであった。 効果はすぐに現れました。 ６月２７日、　美濃に到着した大海人皇子の下に尾張（おわり）を束ねる役人が２万人の兵とともに集まってきました。 さらに、　地域の豪族も傘下に入りました。 巧みな仕掛けで人心を集め、　大友皇子の軍と拮抗（きっこう）するまでに膨れ上がりました。 天下分け目の戦といわれる　徳川家康と石田三成との関が原の合戦（１６００年）よりはるか９００年以上もの昔、 ６７２年７月、この関が原から天下分け目の戦が始まろうとしていた。 大友皇子は 関が原にある大海人皇子本陣とその味方が多かった飛鳥宮へと兵を進めた。 大海人皇子は 琵琶湖の東と西から大津へと兵を進め、 さらに、　別働隊を飛鳥へと向け、　大友皇子の背後を狙うのである。 ここでも、　大海人皇子（おおあまのみこ）　は不思議な行動をするのである。 本陣（ほんじん）を置いた　行宮（あんぐう）遺跡　から一歩も動かず、　自ら戦線へ出ることはなかったのである。 陣中で、 　「近江の朝廷では、左右の大臣や知略にたけた群臣が寄り集まって計略を立てているのに、 　　自分には戦略を相談する相手がいない」　と、　言ったところ、 これを聞いた　大海人皇子の息子・高市皇子（たけちのみこ）はこう言いました。 　「近江の群臣がどんなにたくさんいようと、どうして大王（おおきみ）の威霊（いれい）に逆らえましょう。 　　臣（しん）高市（たけち）が大王（おおきみ）の命（めい）を賜って将軍たちを率いるならば、敗けるはずがありません。」　と。 これに対し、　大海人皇子は 　　「油断するでないぞ、　しっかりやれ」　と言って　高市皇子（たけちのみこ） に 総大将 を命じました。 息子・高市皇子（たけちのみこ）　を　大友皇子（おおとものみこ）　と対等の地位とさせ、　自分は自らを一段高い存在と位置付けたのである。 すなわち、　従来の大王（おおきみ）より一段高いということである。 ６７２年７月２日、　大海人皇子（おおあまのみこ）軍　は出撃しました。　壬申（じんしん）の乱　である。 ７月５日、　飛鳥（あすか）の争奪戦で大海人皇子軍が勝利。 ７月１７日、　大海人皇子軍は近江各地で勝利し、　大津宮にまで迫りました。 ７月２２日、　現在もある　瀬田（せた）の唐橋（からはし）　付近で、　大津宮攻防戦が始まる。 　　　　　軍勢の旗は野をおおい、　かきたてる塵は天に届くほど、 　　　　　打ち鳴らす鉦鼓（しょうこ）の響きは数十里にとどろき渡り、 　　　　　矢は続けざまに放たれて雨のごとく降り注いだ。 ７月２３日、　大友皇子　自害。　　ここに　壬申（じんしん）の乱　は　終結　した。

天武（てんむ）天皇　誕生

大王（おおきみ）　となった、　大海人皇子（おおあまのみこ）　は都を　奈良・飛鳥　へと戻した。 従来は、　宮殿の中に正殿があり、　そこで政治が執り行われていた。 大海人皇子は宮殿の南東に別の正殿を作った。　（飛鳥浄見原（きよみはら）遺跡　の発掘により判明） そこに、　政治機能を持たせたのである。 中国で政治を執り行う場所は　太極殿（たいきょくでん）　であるが、　それを真似て 大極殿（だいきょくでん）　を作ったのである。 大極、　それは天の意志が皇帝に伝えられる神聖な場所　のことである。 自らを神に近づけ、　大王（おおきみ）の権威を絶対的なものにしようとしたのである。 中国には古くから、　天人感応（てんじんかんのう）　という言葉がある。 　　その意味は　「皇帝は天から命じられて人民を統治する天子である」 新しい大王（おおきみ）の存在を皆に知らしめる 新たな呼び名 （天皇） を考え出しました。 天武２年（673）２月２７日、　大海人皇子（おおあまのみこ）　即位　天武天皇（てんむてんのう）　となる 　　　　　　　　　　　　　　　　　　　歴史上始めての天皇の誕生である。 　　　　　　　　　　　　　　さらに、　神話の時代から続く 大王（おおきみ） 全てを 天皇 と呼ぶようにしました。 中国の漢語、　中国の道教では最高の神格が天皇である。　「不老不死の絶対的な、神聖な」　という意味である。 天皇中心の新しい国家として　「日本」　という国名もここで決まったようです。　（ 「日本」　後述 ） 　　天武天皇は、　「日本」　を　「にっぽん」　と読んだのか？、　「にほん」　と読んだのか？　どちらだったのかな？

その後

かつて都があった大津に壬申の乱で敗れた大友皇子（おおとものみこ）を弔（とむら）う法伝寺（ほうでんじ）がある。 わずか２５歳で悲運の最期をとげた大友皇子。 その息子興多王（よたおう）は罪を許され、　天智天皇が建てた法伝寺の住職となった。 以来この寺は皇子の一族の手によって守られてきた。　現在の住職も　「大友」　姓である。 明治３年、　短いながらも大津で政治をした大友皇子（おおとものみこ）に 弘文（こうぶん）天皇 の称号が与えられ、　名誉回復がなされました。 天武天皇は、自分に味方した者たちを手厚く庇護（ひご）しました。 特に、　伊勢神宮　との絆は強いものとなりました。 天武天皇は自分の娘を伊勢神宮におくり、住まわせました。 天皇にかわって伊勢神宮に奉仕するという役目で、　それは　斎宮（さいくう）と呼ばれます。 以来およそ７００年間、　斎宮は皇族からおくられました。 大海人皇子（おおあまのみこ）が、かつて身を隠していた奈良県吉野町窪垣内（おくがいと）では不思議な風習が残っている。 それは、　「犬を飼う人は一人もいない」　ということです。　「犬を飼うと災いに会う」　という伝承があるからです。 　　大海人皇子を追手から逃れさせるため、　村人は川の船に皇子を隠しました。 　　しかし、　追手の犬が皇子の匂いに気づき船に近づこうとしました。 　　村人は　一斉に犬に石を投げ殺してしまい、　皇子をお守りしました。 以来、　犬を弔う犬塚が作られ、　村人達によって守られている。 近江神宮 藤原定家（ふじわらのていか）によって選ばれた百人一首の一番歌は　天智天皇（てんじてんのう）　の 　　「秋の田のかりほの庵の苫をあらみ　わが衣手は露にぬれつつ」　である。 この天智天皇を祀っている近江神宮にて毎年１月、　「百人一首かるた競技大会」　が開催されている。 かるた競技大会は明治時代のジャーナリスト黒岩涙香によって始められました。

海人（かいじん）族 の なぞ

大海人皇子　の　名の中にもある　海人（かいじん）とは　どういう人たちか？ じつは、　大海人皇子が挙兵した吉野の地こそが海人たちの故郷だったのです。 　　海から遠く離れた吉野の山奥にもかかわらず　海（かい）神社　が存在する。 　　また、　金峯山寺（きんぷせんじ） 蔵王堂（ざおうどう）には　巨大な船を描いた絵馬が奉納されている。 　　さらに、　吉野の山中からは海で使用したと思われる大きな釣り針とか土錘（おもり）も多数発掘されている。 　　　　このように、　山奥にもかかわらず海に関係するものが多く存在する。 　　そして、　この吉野の地には黄金伝説まで存在する。 海人たちは海の交易で財をなし、強大な実力を持っていたのである。　当然渡来人（とらいじん）も多くいたのであろう。 　　では、　なぜ海で活動する海人たちが吉野の山奥に住んでいたのか？ 　　当時の船は木造であった。　船底の木はすぐ腐ってくる。 　　　　それを防止するために水銀（すいぎん）を塗っていたのである。 　　であるから、　水銀を採掘する技術を持っていた。　 　　また　釣り針など鉄製品が必要なため　鉄を作り出す技術も持っていた。 　　この吉野の地は２５，０００人もの人が住む巨大な山岳鉱山都市であったのだ。 　　　　水銀が採掘されるところでは　多くの場合　金も採掘されている。 大海人皇子の行軍ルート上の　三重県四日市市にある　志で（しで）神社　（「しで」 の 「で」 という漢字は　「氏」の下に「一」） 　　戦勝祈願した神社の一つであるが、　ここは　鉄鉱を扱う海人たちの神社である。 行軍ルートから離れている場所にも　多くの海人たちの痕跡がある。 　　愛知県豊川市　津守（つもり）神社　JRの駅名は　大海（おうみ）駅 　　愛知県豊田市　射穂（いぼ）神社　６７２年９月　大海人皇子（天武天皇）創建 では、　海人たちのルーツは？ 北九州ではないかとされている。 志賀島（しかのしま）にある志賀海（しかうみ）神社 　この神社の宮司（ぐうじ）が　阿曇（あずみ）さんという。　この宮司の先祖が海人族である。 　　得意の航海術を使って全国各地に散らばっていったようだ 　　長野県安曇野（あずみの）という地名も海人族が住んでいた名残である。 この志賀島はその昔、奴国（なこく）の一部であった 　　この志賀島で　漢委奴国王印（かんのなこくおうのいん）　が発掘されている 　　　魏志倭人伝（ぎしわじんでん）には　建武中元二年　倭奴国奉貢朝賀　光武賜以印綬　とある 奴国が滅亡したとき吉野の地にも逃れていったのであろうか？ 　　そういえば、　吉野町にも志賀（しが）という地名がある。 黄金伝説 黄金の国ジパング伝説はマルコ・ポーロの東方見聞録に 　　Zipangu (ジパング）は大陸の東の海上１５０マイルに浮かぶ　独立した大きな島国である。 　　ばく大な金を産出し　宮殿や民家が黄金でできているなど　財宝にあふれている。 と、　記述されている。 じじつ、　岩手県平泉町にある　中尊寺（ちゅうそんじ）金色堂（こんじきどう）　は 奥州藤原氏が金をふんだんに使用して建立した仏教建築の傑作である。 このことから、　黄金と言えば、　奥州平泉　というのが定説となっている。 しかし、 本当は　奈良 吉野　が　日本の黄金伝説の地ということは学者の中では一部信じられている。 その昔、　この地では　黄金文化が花咲いたことで有名である。 　　世界遺産　東大寺　には　高さ１５ｍ　重量２５２ｔ　の　東大寺盧舎那仏像（るしゃなぶつぞう）がある。　（俗に言う　奈良の大仏さま） 　　かつては、　全身が金で覆われていた。 万葉集には　この大仏の金は　陸奥国（むつのくに）から金が献上された　と書かれている。 　　　このことから、　東北地方の黄金伝説が一般的になった。 ところが、 大仏造営に使用した金は　　　１０，４００両（約４００ｋｇ）　であるのに対し、 陸奥の国から献上された金は　　　９００両（約　３４ｋｇ）　と　１０％にも満たない。 では、残りの９０％以上の金はどこから調達したのか　・・・　それは　吉野　からではなかったのか。 　　天皇に直結した産地であったので、　その後、封印されたのではないのか？ 天武天皇　と　海人　と　黄金　・・・　現在でもなぞは一部解明されていない。

この当時の皇室系図

　　　77 「大化の改新」のなぞ

参考文献：ＮＨＫ　「その時　歴史が動いた」、　「シルクロード」
　　　　　　　テレビ愛知　「みのもんたの日本ミステリー」

（制作：2007/07/01/無断転載禁）

                              

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